「過去が怖くて何ができるの」

思い出した私は自分自身にそう言い聞かせた。

本当は愛するあなたに言ってほしかったのに。


「今が怖くて何ができるの」

気づき始めた私は自分自身にそう言い聞かせた。

本当はあなたに慰めてほしかったのに。


「未来が怖くて何ができるの」

立ちすくんだ私は自分自身にそう言い聞かせた。

本当は愛するあなたにそばにいてほしいのに。



私は自分自身にしか言い聞かせることができない臆病者。

そんな私が愛しいと言ってくれたあなた。

私を受け入れてくれたあなたが愛しい。



「進め」

手を差し伸べてくれたけど。

「愛してる」

抱きしめてくれたけど。


あなたの全ては知らない。

あなたも私の全ては知らないはず。

それでいい。それがいい。


「」

その声で。

「」

その手で。

「」

その目で。

いつも私を焦がせたの。


「愛してる」

「私も愛してるわルルーシュ」


この言葉をお互いにずっと言っていた。

そんな時間がとても嬉しかった、楽しかった。


「そばにいる」

「そばにいて」


そんな願望を言い続けていた。

叶わないってことは分かっていたのに。

叶わないから言っていたのかもしれない。

しゃぼん玉はいつか消えるように私たちの愛も消えるはず。

そんなの目に見えていたはずなのに。



「私はルルーシュにとって邪魔なのよ」

全てを言い終わる前にルルーシュは私にキスをした。

甘い、甘い。深い、深い。

まるでそれ以上言うなと言ってるようなとても気持ちのこもったキス。


「そんなことは思っていない。の思い込みだ」

目が鋭かった。怒っている。私には分かる。


「いいか。俺のことを邪魔だと思うのは別にいいんだ」

ルルーシュはさっきとは違い、とても優しい目で語りかけてくる。

声も、とても、とても優しかった。私は自然と涙が頬を伝う。


「ただ、勝手に思い込むのはやめてほしい」

ルルーシュが私の髪を撫でる。優しく、優しく。

こんなに人の優しさに触れたのは初めてかもしれない。

いや、それまでもルルーシュから優しくされてきていたのかもしれない。

たぶん気付いてなかっただけだろう。

涙が手の甲へ落ちてきた。こんなに泣いたのも初めてかもしれない。


「俺はこの先、変わってしまうかもしれない」

ルルーシュが私の頬を伝う涙を拭う。

「、お前だけは変わるな」

鋭い目つきに変わった。怒ってるんじゃない。切なくなっているんだ。


「私は変わらないわ。だってルルーシュはいつまでたっても変わらないもの」

いつの間にか涙は出てこなくなった。

ルルーシュを安心させるため笑ってみせた。ちょっとぎこちなかったかもしれない。


「信じてるわ。ルルーシュは変わらない。そして私も変わらない」



小鳥が可愛らしく鳴いている。花は満開だ。風がすごく気持ちいい。春が来たのだ。

季節は目を瞑っていても、立ち止まっていてもやってくる。

春も何度も巡り来る。春が来ないなどありえない。だから。







巡り来る春に







イメージソング GARET CROW "巡り来る春に"


(2007/3/11)