Gentleness
- 強い雨の日 -
強い雨が嫌い。大きな音を立てて雨が勢いよく落ちてくるから。
雷が嫌い。大きな音を立てて黄色、時には真っ赤に光って、落ちるから。
皆と居るのが嫌い。大きな声で笑ったり騒いだりするから。
静寂が嫌い。音さえも聞こえてこない。これほどの恐怖は他にあるだろうか。
孤独が嫌い。誰もそばに居ない。これほどの恐怖が他にあるだろうか。
大きな音が嫌い。でも何も聞こえてこないのも嫌い。
ひとつだけ言える事は、どちらも私の中では恐怖だということ。
今、雨が降っている。強い雨。
今、雷が鳴っている。真っ赤な雷。
今、誰も居ない。雨の音しか聞こえてこないという孤独、静寂。
ふたつの恐怖が近づいてくる、寄り添ってくる。
ルルーシュが来てくれたら、この恐怖は遠ざかるだろうか。
シュッとドアが開く。私は布団を頭まで被り、泣いていた。ふたつの恐怖の所為。
「」
優しいルルーシュの声が聞こえた。これで孤独でも静寂でもない。ひとつ、恐怖がなくなった。
私は布団から顔を出し、首に抱きついた。思った以上にルルーシュの顔が近くて驚いた。
「また泣いていたのか。大丈夫だ、もう雨も雷も止んだ」
ルルーシュが優しく髪を撫でてくれた。雨も止み雷の大きな音も聞こえなくなった。
これで恐怖がなくなった。
「ありがとう、ルルーシュ。ありがとう」
私はまだ泣いていた。貴方の優しさが身に沁みた。
「すぐに来れなくて悪かった」
強く抱きしめてくれた。大きな音は嫌い、だけど、大きな愛は好き。
「いいの。来てくれたから」
ルルーシュは優しいキスをしてくれた。愛を感じることができた。
「食事にしよう。ナナリーも待ってる」
そういって手を引いてくれた。
涙はとっくに止まっていたのに、また流れ始めたのは嬉しさのあまりなのかな。
(2007/8/23)