夏の終わりが近づいてきている。もうそんなに暑くないし、日焼けをすごく気にすることも少なくなった。
今年は楽しい思いでが少なくて、嫌な事が去年より多かったような気がする。大人になったからだと自分に言い聞かせた。
勉強もそこそこして、たまに時間があったらルルーシュに会って、生徒会の仕事を皆でやって、暇なときは本を読む。それの繰り返しで夏が過ぎていった。別に楽しくないわけでもない。嫌でもない。
ただ、今年は特別、ルルーシュと会うのが少なかった。だからあまり楽しくなかったんだと思う。でもルルーシュの所為じゃないし私が怒る権利は全くない。
だからあの生活を繰り返して夏を過ごすしかなかった、と思うことにする。
「終わったぁ」
「もう5時よ!4時間もやってたのね私たち」
生徒会の皆で仕事をしていた。もちろんルルーシュはいない。
「さぁ帰りましょ。夜から雨が降るって予報だし」
「私、傘もってきてないです」
「バカねぇ。あっ!ルルーシュ呼んで相合傘して帰ったら?」
「嫌ですよ。それなら濡れたほうがいいです。どうせ来れないだろうし…。じゃあ帰りますね」
「でも雨降ってきたわよ」
「いいんです。シャワーだと思って帰ります」
「風邪ひかないようにね。お疲れ様」
「さようなら」
最初は小降りだったのに玄関に行くうちにだんだん大降りになってきた。私は何故かは分からないけど走らずに雨の中ゆっくり歩いていた。きっと、夏の嫌な思い出を雨が流してくれると思ったから。きっとそう。
「…!」
遠くから声が、ルルーシュの声が聞こえた気がした。でも雨の所為でよく分からない。
「!」
また聞こえた気がした。後ろを振り返ろうとしたら誰かに抱きしめられた。一番会いたかったあなたに。
「何で傘持ってないんだ」
「忘れたの」
「何で歩いてるんだ」
「走りたくなかったのよ」
「何で、何で泣いてるんだ」
「会えたからよ」
力強く抱きしめてくれた。彼に会うのは1週間ぶりですごく新鮮な感覚だった。
「ごめん」
「謝らなくていいから」
電話ではなく面と向かって言ってくれたことが何より嬉しかった。私はルルーシュにキスをする。
私からは初めてだからルルーシュは目を見開いて驚いてたけど、背中に手を回してくれた。
びしょびしょになりながら私たちは笑いあっていた。もう、ぎこちないとか、想っているだけ、なんて言葉は私たちには似合わなくなっていた。
夏の終わりの長い雨
イメージソング GARET CROW "夏の終わりの長い雨"
(2007/9/3)