コントラスト









寒くなり始めた季節、私は久しい人と会った。実際には呼び出されたのだが。 1週間ほど前、どこから入手したか分からないが、私の携帯電話に電話があった。知らない番号、出てみるとよく知る人。すごく嬉しかった。 彼はメロ。ワイミーズハウスで一緒に過ごした、私の好きな人。でも出て行ってしまった。行方は分からなかった。今、会えて本当に良かった。




「っ…その傷どうしたの。普通に生活してたらそんな顔にはならないわよね」




私は再会を喜ぶ前に最初に目に入った大きな傷が気になった。やけどにも見える。酷い傷だ。 メロは少し黙ったあと、ワイミーズハウスを出て行ってからの話しを簡潔に教えてくれた。 マフィアに入り、キラを追っていたこと。そのキラに殺されかけ仕掛けていた爆弾のスイッチを押し自爆してどうにか助かったということ。 メロは幾度となく危ない橋を渡り続けていた。でも生きていたのだから全ては良かった。




「良かった、生きてて。心配した、のよ」




いつの間にか涙は溢れていて、私は手で顔を隠した。メロが近づき抱きしめてくれる。温かかった。それだけでも安心感を与えられた。




「お前は何していた」

「メロが出て行ってから何もかもが手につかなくなって、1年後に私も出て行ったわ」

「それからはどうしてたんだ」

「ずっとメロを探してた。小さな情報でもいいからと手当たり次第に」

「……」

「メロの傍に居たかった。生きているかを確認するだけでも良かったの」




私は幼く笑って、もういいの会えたから、と一言で片付けた。





「ところで。何でマットもいるの」

「んー。が来るって知ったからって言ったら俺はどうなる?」

「確実にメロに殺されるわね」

「だろ?だからメロが土下座してきて頼まれた、とでも言っておこうと思う」




マットはどこか自慢げにメロのほうを向いて言った。メロは睨んで、土下座なんかしてない。と言っていた。冗談の通じない奴だ、といってマットは部屋から出て行った。
それがワイミーズハウスの頃と重なって面白く、懐かしく、悲しかった。




「私はこれからメロの傍に居れるの」

「あぁ。そのために呼んだ。俺も探してたんだ、のこと」




嬉しくて涙が出そうだったけど、さっき泣きすぎて涙はもうでなかった。その代わり力いっぱい笑うことができた。半年振りくらい。




「これから何をするの」

「キラを捕まえる」

「何故?メロが世の中のためキラを捕まえるとは思えない」

「聞いてないか……Lは殺された。キラに」

「Lが殺された…キラに…」

「俺はキラが許せない。俺とニアだけがLの死を知らされた。ニアももう動いている」




あのLが殺された。キラに。もちろん私はキラのことを知っていたけどそれほど気にかけていなかった。キラ崇拝者でもなければ、キラは犯罪者だとも思わなかった。 でも今、気持ちが変わったような気がする。Lという存在の大きさを初めて知ったような気がした。Lを尊敬していた私にとっては十分すぎる理由だ。メロもニアも同じ。




「そう、だったのね。知らなかった。だからメロは出て行ったのね」

「あぁ。キラを捕まえるために」

「でも全てがLのためじゃないんでしょ」

「どういうことだ」

「Lがキラに殺されたからというのは理由にはなる。けど決定的じゃない」

「……」

「メロはニアとの決着をつけるためにキラを追ってるんでしょ」

「…」

「ニアよりも早くキラを捕まえようとしている、違う?」

「違いない。俺はキラとも戦いながら、ニアとも戦っている」

「忙しい人」





私はソファーに深く座りなおしてメロが食べていた板チョコに噛り付いた。



「甘い」





それは私たちの愛を示す度合い





(2007/10/31)