360度の恋模様










もし私に360度見渡せる目があったならこんな素敵な出会いはなかったでしょう。

でも今はその360度見渡すことのできる目が欲しいのです。そう今、360度の目を持つことができたら貴方を一目で見つけられる。 でもいつも360度見えてしまったらそれなりに嫌な物を見てしまうかもしれない。でも私は1秒でも多く貴方を見ていたいのです。それに比べれば嫌な物などなんのその、今はその目が喉から手が出るほど欲しいもの。









あの日私は不覚にも転んでしまった。誰かにぶつかり転んでしまった。その時持っていた書類も周りへばら撒いてしまった。 私にぶつかられた貴方、アレン・ウォーカー。「大丈夫ですか」と私に手を差し伸べてくれる。あぁ何て紳士的な人。

書類も拾うのを手伝ってくれ、もうまさに私にとっての白馬の王子様になった。

私はあの時のことを繊細に覚えている。今でも思い出せと言われればすぐにでてくるようになっている。 貴方はたぶん、いや必ず忘れているでしょうけど。








私は今もこの前の様に書類を抱え廊下を歩いている。思うことは貴方にもう一度会えますように、ただそれだけ。

そんなことを考えていたら誰かにぶつってしまった。そしてあの運命の時と同じように転び、同じように書類をばら撒いてしまった。


ごめんなさい、と言おうと顔を上げると手を差し伸べられる。同じ手。

「大丈夫ですか」同じ台詞。同じ声。

相手を見ると、同じ顔。私の王子様になった顔。


「あれ、この前の方でしたか。確かさんでしたよね?すみません大丈夫でしたか」






神様、私は何度ときめきを覚えればよいのですか






(2007/7/15)