終わりも始まりも
あなたと居られますように







「ねぇ神田」


何だ?と普通の返答。
別に普通じゃない回答を望んでいたわけではないけど、何だか気が抜けてしまう。


「もうあと数時間で今年が終わってしまうわ」

「今年が終わったとしても俺には関係ねぇな」


窓の外で綺麗に降る雪をみながら神田はいつもと変わらない口調で言う。
別にいつもの口調が嫌いなわけじゃないけど最後の最後ぐらい…と思ってしまう。


「神田はいつも夢のないこというのね」

「は夢があるって言うのかよ?」

「別に夢ではないわ望みよ」

「同じことじゃねぇか」


神田は少し笑ってまた外を見ていた。そんなに雪が好きなのか。


「私の望みはもう叶ったも同然だからいいのよ」

「何だよその望みは」

「神田と年末も、年始も、来年もずっと一緒に居ること」

「もし俺が明日死んだらその望みは叶わなくなるな」

「そんなこと絶対にないわ」

「何故そんなことが言える?」

「神田はそんないい加減な奴じゃないもの」

「どうだろうな」

「…そんなあなたが大好きよ」



私が抱きついたら抱き返してくれる。

私がキスをせがんだらキスをしてくれる。

私が一緒に居てと言ったら一緒に居てくれる。

私が死なないでって言ったら死なないでくれる。



「年越しの時には一緒に居てくれるんでしょ?」

「あぁ。時間になったら呼びにこい」


神田は私にキスをひとつして団服を翻し歩いていった。


私は背伸びをして神田とは逆の方へ歩いていった。






私の望みはそれだけです








(もうあと一日で今年が終わってしまいます)