Halcyon
(幻でも現実でも)
最近寒い日が続いていたのでこりゃ絶対風邪引くな…と思っていたときにバカみたいに風邪を引いてしまった。
でもバカは風邪引かないと一般的には言うのでバカみたいにじゃなくて天才的に風邪を引きました。
一日中休んでいたいけど人生そんなに甘くない。私たちエクソシストは尚更。あのコムイさんならまた尚更。
と、思っていたのに。神田が勝手に私の部屋に入ってきたと思ったら。
「寝てろ」
と言われ私は頭に“?”を浮かべて首を傾げていたら。
いきなり神田にお姫様だっこされた。
そのまま歩いていって、ベッドに放り投げられて布団かけられて、いつ持ってきたのか水の入った器が机に置かれ、濡れたタオルを頭に乗せられた。
「ちょっと神田!今日任務あるから無理だって!」
「任務は代わりに俺が行く。は寝てろ」
そうなの!?とかなりびっくりしたけどありがたいのでお言葉に甘えて休むことにしました。(そういう所はしっかりしている私)
「何か食いたいものあるか?」
「神田の手料理なら何でも」
神田はその言葉に少し怒っていたが何か作ってくれるようだ。
神田が戻ってくるまで寝てることにした。
数分がたって神田が戻ってきた。なにやら鍋らしき物を持っている。
「……なにこれ」
「粥。上手いぞ、食ってみろ」
水にご飯が入ってるよ…とか思いながらも神田がスプーンを私の口のところまで持っていって「口開けろ」とか言うから仕方なく食べたら。
あっこれものすごくおいしい物なのね!と感心してしまうほどおいしかった。
「お、おいしい!日本の料理?」
「あぁ。風邪引いた時は日本ではこれを食べる」
もっと頂戴とばかりに私は口を開ける。神田はしょうがねぇなって感じで溜め息をするけどちゃんと私に食べさせてくれる。
そんなあなたがすごく優しくて、お粥がすごくおいしくて笑ってしまう。
「今日は優しいのね、神田」
「幻だ。明日目が覚めたら今日の俺は忘れてる」
私の額にキスを一つして「風邪うつされたら困るから口は我慢しろ」と言った貴方が、
「任務が終わったらまた来る。それまで寝てろ」と言った優しい貴方が、本当に幻のようで。
「今日の神田が幻でも私は忘れないから。いってらっしゃい。生きて帰ってきて」
「あぁ。必ず帰ってくるからそれまでちゃんと寝てろ」
ドアを閉めて行ってしまった神田の幻はいつも以上に優しかったのとすごくたくましく見えたのもそれもまた幻。
その愛しさ故に
(その幻も幻を見ていたのかもしれない)