「が大怪我した」
そうコムイから伝えられた神田は大急ぎで教団へと帰ってきた。
部屋に行っても治療室へいってもはいない。それどころか教団の者誰一人としてすれ違わないのだ。
普段いくらバカだといわれている神田でもおかしいと思った。
司令室へ行ってみたが入口のドアに
“神田くんへ 食堂へ来てね☆”
などと貼り紙がしてあった。普段の神田なら無視するところだがが関与しているとなると別だ。
仕方なく食堂へと向かった。もちろん走って。
食堂に着き、ドアを開けた瞬間、神田は開けたドアを閉めようと思った。
教団の皆がグラスを片手にドンチャン騒ぎをしていたからだ。
しかしコムイに見つかってしまい、食堂へと無理やり連れ込まれた。
「ハーイ!主役の登場だよー!皆グラス持って!」
一角に設けられたステージに上がらされてグラスを無理やり押し付けられた。
ステージの上のところには
“おめでとうカンダくん! 誕生日パーティー(仮)”
の文字。神田は眉間にしわを寄せコムイを睨んだ。
「は何処だ」
「そこで酔いつぶれて寝てるよ」
コムイはが寝ている机の方を指差した。
「大怪我してるんじゃねぇのかよ」
更にしわを寄せ睨みつける。さっきよりも声が低くなった。
「嘘だよ。だってそれぐらい言わないと神田くんこないでしょ?」
コムイはニコニコしながらグラスに入った酒を飲む。
「わざわざこんなことしなくていい」
そう言いながら神田はコムイの横を通り抜けへと近づいた。
途中、相変わらずたくさん食べているアレンや、王様ゲームをするラビ、など仲間の笑顔を久しぶりに見たような気がした。
「おい、。起きろ」
の体を揺さ振り起こそうとするが一向に起きる気配がない。
呆れた神田は今はラビと一緒に王様ゲームに熱中しているコムイの隙を突き、食堂から出て風が静かに吹くバルコニーへと移動した。
寒くもなく温くもない、心地よい風が神田の長い髪をなびかせる。
背後からコツコツとブーツの音が聞こえてきた。
「せっかく皆がお祝いしてくれてるのに」
の優しい声が響き耳に伝わってくる。
「俺はやってくれだなんて頼んでない。あいつらが勝手にやってることだ」
振り返りの目を見て話す。
「たまには息抜きも大切なのよ。ユウにはそれがない」
は持っていた2つのグラスの片方を神田へと差し伸べる。
神田はそれを受け取らずにまた外を見始めた。
「1年に1度ぐらいいいじゃない。特別な日に」
「別に特別じゃない。俺が生まれた日。ただそれだけだ」
「それが特別なんじゃない。皆にとっても私にとっても」
は神田の隣へ移り、心地よい風に吹かれている。
「おめでとう。ユウが生まれたっていう普通なことなのにそれがとても特別だから」
は神田にキスをした。触れるだけだが列記としたキス。
神田はにキスをした。触れるだけではなく深くて甘いキス。
蕩けてしまいそうな愛しい時間へ...
Beloved time
(たとえ流れがはやくとも)