「無事に帰って来ること」
受話器越しにが言う。神田は溜め息をつき、分かったと一言。今、神田は任務で出てきている。
「任務が終わったら私に会いに来ること」
神田はうっとおしそうにまた溜め息をつく。
「返事」
「…あぁ」
電話の切れる音。がどんな表情をしているか目に見えた。
○
「何でがモヤシの部屋にいるんだ」
神田が任務から帰ってくると、の部屋には誰にもいなかった。食堂や司令室などにも行ってみたがどこにも居ない。
仕方なく神田がリナリーに尋ねると、アレンの部屋に居ると言われ、足早に向かった。
「カンダが遅いから一緒にカードをしてたんですよ」
「薄情な彼氏さねぇ。もらちゃうさ?」
神田がアレンの部屋に行くと、ラビもおり、3人でカードをして遊んでいた。
呆れる神田に嫌味ったらしい言葉を投げつけるアレンとラビ。神田の表情が険しくなったのがはっきりと分かった。
「おい。部屋に戻るぞ」
「ちょっと待って、今いいところなの」
カードを握り締め、睨むは帰る気がなさそうだった。呼んでおいて何なんだ、と神田は眉をひそめ、強引にの腕を掴み歩き出す。
の手にあったカードが床に散らばる。
「怖い彼氏さぁ。こんな奴の何処がいいんだ?」
「本当ですね」
この会話を聞いたが笑って答える。
「こういう強引な事しか出来ない不器用さが大好きなのよ」
○
二人は神田の部屋に戻った。入ってドアを閉めるとすぐに、神田がの口を塞ぐ。長くもなく短くもない。強くもなく、弱くもないキスだった。
「今日が何の日か知ってて、こんなことするの?」
「祝ってくれるのか?」
「私だって大切な人の誕生日ぐらい祝うわよ」
そう言って、は自分から神田に近づく。あと少しで唇が触れるということころで止まる。二人とも目を開け、お互いを見る。
が笑うと、神田も釣られて微笑する。
「誕生日に訪れる気持ちって何だと思う?」
「知らねぇな」
「生きててよかったなぁって思うのよ」
「そうなのか」
「ユウには訪れてこないのかしら?」
会話が途切れると、の顔が少し動き、神田にキスをした。
「今、思ったでしょう」
「そうかもな」
Birth of the life
(2009/6/6)