「リナリー。今日は七夕ね。短冊を書こうよ」
「そうだったわね。皆にも教えましょう」
「司令室にいけばいるかしら」
七夕の物語について話しながら歩いた。司令室へ着くと、中央には笹が立てられている。
「これ兄さんが提案したの?」
「そうだよリナリー。今日は七夕だって言ったら皆知らないから実際にやってみたんだ」
アレンやラビが机に向かって短冊を書いている。何を書くか真剣に悩む姿がいやに子供らしくて笑ってしまった。
「アレンは何て書いたの?」
アレンの短冊を覗いてみると、‘これからも美味しいご飯が食べられますように’と書かれていた。お願いの内容にまた笑ってしまう。
「それにしても、短冊に英語で願い事って合わないね」
「そうね…何か七夕って感じがしないわね」
私とリナリーが考えたことが一緒だったらしく、二人とも同時に行動を始めた。私はアレンに、リナリーはラビにひらがなを教えて縦書きに書かせる。
見本を書き、それを見ながらアレンがもう一枚書き終えた。その短冊は、最初のものよりはるかに幼稚に見え、また笑が込み上げてきた。
「さんは何て書くんですか?」
「まだ秘密。今からユウのところへ行って書かせてくるわ」
「カンダが書くわけないじゃないですか」
「大丈夫よ」
私は、短冊を2枚持ってユウの部屋へ向かった。書いてくれるという確信はなかった。
「ユウ、今日は七夕ね」
「あぁ」
「短冊に願い事を書きましょう」
「書かねぇ」
「本当に?」
笑いながらユウの部屋の机に向かう。私は自分の願い事を短冊に書く。大きくもなく、少し控えめな字の大きさだった。
「じゃあ私の願い事と同じでいい?」
「別にいい」
了解を得て、‘’と書いた下に‘ユウ’と書く。
「何て書いたんだ」
覗き込むユウに私は見やすいように短冊をずらす。ユウの横顔を見ていると、少し笑ったような気がした。
「日本の伝説だと彦星が織姫に会いに行くけど、中国では織姫が彦星に会いに行くって知ってた?」
「知らねぇ」
「ユウはどっち?私に会いに来てくれる?私が来るのを待つ?」
何も言わなくなった。考えているのか、言えないのか。私はユウが口を開くまで待っていると、不意にユウが近寄った気がした。
「どうせ俺が会いに行ったとしても、も会いに来てるだろ?」
「そうかもね。待ち焦がれるような性格でもないしね」
つまり、二人は同じタイミングで歩きだし、天の川に架かる橋の中央で出会う。そんなところだろう。
少しロマンティックだと思った私は期待しすぎかもしれない。
ユウが更に近づく。鼻と鼻がぶつかる寸前で止まる。この微妙な距離が、私の心臓を揺らしてるのか。
「…何?」
「‘ここ’って何処のことだ」
「黒の教団…か……ユウの隣かな…」
目を合わせず少し小さな声で言った。彼は分かっていてわざと言わせたのだ。ユウは笑い、深く口付けられ、私との距離はなくなった。
‘ずっと、ここがホームでありますように’