傷に沁みた水飛沫
 




葉舟




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朝日が部屋に差し込んで自然に起きることができた。朝は苦手だから頭が冴えるまで外を眺めていた。ドンドンと少し乱暴にドアが叩かれる。


さんおはようございます、一緒にご飯食べに行きません?」

「今起きたばかりなの。準備ができたら行くから、先に食堂行ってて」

「分かりました。また後で」


ドア越しに会話をして、急いで支度を始めた。起きたばかりではなかったけど、まだ着替えもしてなかった。顔を洗う。毎朝、顔を洗うことで生きている実感がわくような気がする。 水が好き。人は水がないと生きていけない。でも水の中では生きていけない。それぐらい水は偉大で無限なんだと思う。私のイノセンスが そんなこと毎朝顔を洗う度に思ってるのなんて、たぶん私だけ。 食堂に向かう途中にたくさんの人に声をかけられた。久しぶり、元気か?と笑いながら話してくれる。会えなかった時間は辛いけれど、あった時の喜びでその苦しさは消え去るものだと、この数日で分かった。


食堂に着くと、エクソシストやファインダーが騒がしく食事を楽しんでいた。その中で積み上げられた皿に囲まれたアレンを見つけた。夢中で食べるアレンを見て少し笑ってしまった。


「おはよう。注文は何にする?またうどん?」

「おはよう。そうね、今日は朝食セットでいいわ」

「そんなものないわよ?」

「ジェリーが好きに作って」

「腕が鳴るわね!待っててすぐに作るから」


ジェリーが厨房の奥へ入っていった。カウンターから食堂を見渡す。昔と比べるのはあまり好きではないけど、今の教団はすごく平和。平和だと思わないのは、それほど日々が穏やかだから。


「お待たせ。ジェリー特製朝食セットよ!」

「ありがとう、ジェリー」


渡された‘ジェリー特製朝食セット’を持ちながらアレンと向かい合わせの席に座った。


「遅れてごめんね」

「いえ、いいんですよ。僕まだ食べますし」

「まだ食べるの?さすがに寄生型は違うわね」

さんも寄生型じゃないんですか?」

「私もそうだけど、普通の人と同じ量しか食べれないわ」

「そうなんですか」



私と話しながらもアレンの手は止まらなかった。話題は私のイノセンスのことになる。



「そういえば、さんに初めて会った時は驚きましたよ」

「イノセンスを解除した時のこと?」

「剣を自分に向けて刺した時はもう手遅れかと」

「みんな最初は驚いてたわ。私は体の中の水の粒子で武器を作って戦うのよ」

「すごいですね。あと、僕が教団に辿り着いた時に急に目の前に現れたのは一体…」

「あれね。あれは瞬間移動よ。水の粒子を使って瞬間的に上まで来たの」

「そんなことまでできるんですか」

「でも、いいことばかりじゃないわ」

「例えば?」

「すぐ寝てしまう。あと瞬間移動はかなりの体力を消耗してしまうの」

「つまり長時間の戦闘は無理ってことですか」

「そう。昔はそんな弱くはなかったんだけどね」


いろいろ話しているうちに私は食事を終えたが、アレンはまだデザートが残っているようで、まだ食べるといっていた。 私は今日のイノセンスを検査でへブラスカのところにも行くだろうから少し楽しみだった。









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(2007/11/19)
(2008/2/16 編集)