葉舟
- 13 - 「戦いすぎた、のかな…」 限界に近づいているのが自分でも分かる。体の疲労感は無い。ただ体に住まう聖なるイノセンスが、私を拒んでいるかのような気がした。拒んでいなくとも、私が汚れていっている気がした。 アクマを倒しても何も思わない。昔は可哀想だの何か思っていたけれど今は薄れている。ただ使命を貫き通すのみ、体が分かっている。 それがイノセンスとのシンクロ率の低下の原因ではないかと思う。 「ここに居たんですか」 静かな談話室に明るい声が通る。決して大きな声ではないものの、静寂の中では圧倒的な存在感があった。 「アレン。どうしたの」 「さんとまたお話しがしたくて」 彼は私の正面に座った。いろんな人に聞いて回ってるんです、と笑いながら接してくれた。 「さんは半年間どんな任務されてたんですか?」 「私はただアクマを片っ端から倒してただけなの」 「そんな任務をコムイさんが?」 「いいえ。私が頼んだの。私はアクマを倒し続けないといけないのって色気を使ってね」 少し冗談交じりで話したが、やはりアレンには疑問が残っているようだ。何故、私がそんな任務をお願いしたのか。アレンが口を開く前に説明することにした。 「心を失くしてしまった女の子が居るの」 余韻を残すように、ゆっくりと話す。アレンは真剣に耳を傾けてくれ、少し緊張が解けたような気がした。 「その子は私の所為で心を失くした。目の前で母親を…アクマになった母親を私が壊したから。」 「でもそれはさんの所為じゃないんじゃ…?悪いのは全てアクマを作る千年伯爵…」 「そうね。でも小さな子供に悪いのは私じゃない、なんて言っても信じてもらえないし言い訳にしか聞こえない」 「…だから自分が悪者にになったんですか」 「それでよかったの。それまで私はただ言われたとおりアクマを倒すだけだった。でも意味が見つかったの」 「さんは優しすぎます」 「アレンも優しすぎるわ。マテールでよく分かった」 二人同時に声を出して笑った。それまでの暗さが嘘のような気がした。 「その女の子はまだ元気なんですか」 「施設に預けて戻ってきたから、多分まだ元気だと思う。もう会わないって決めてあるけどね」 よかった、とアレンは自分の事の様に息を吐いた。 ふと、は自分の体の異変に気づく。息がし辛い。胸が熱くなっていくのが分かった。以前にもこの症状は起きたことがある。慌てずに一つずつ言葉を生み出す。 「大丈夫ですか!さん」 「ユ、ウが…ユウが怪我を、してる」 「カンダが…?」 「コムイさんに、伝えて…お願い」 そこでの意識は途切れた。アレンは彼女を背負い、コムイを探す。から不安の叫びが聞こえた気がした。 |
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