叫び
 




葉舟




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「戦いすぎた、のかな…」


限界に近づいているのが自分でも分かる。体の疲労感は無い。ただ体に住まう聖なるイノセンスが、私を拒んでいるかのような気がした。拒んでいなくとも、私が汚れていっている気がした。 アクマを倒しても何も思わない。昔は可哀想だの何か思っていたけれど今は薄れている。ただ使命を貫き通すのみ、体が分かっている。 それがイノセンスとのシンクロ率の低下の原因ではないかと思う。


「ここに居たんですか」


静かな談話室に明るい声が通る。決して大きな声ではないものの、静寂の中では圧倒的な存在感があった。


「アレン。どうしたの」

さんとまたお話しがしたくて」


彼は私の正面に座った。いろんな人に聞いて回ってるんです、と笑いながら接してくれた。


さんは半年間どんな任務されてたんですか?」

「私はただアクマを片っ端から倒してただけなの」

「そんな任務をコムイさんが?」

「いいえ。私が頼んだの。私はアクマを倒し続けないといけないのって色気を使ってね」


少し冗談交じりで話したが、やはりアレンには疑問が残っているようだ。何故、私がそんな任務をお願いしたのか。アレンが口を開く前に説明することにした。


「心を失くしてしまった女の子が居るの」


余韻を残すように、ゆっくりと話す。アレンは真剣に耳を傾けてくれ、少し緊張が解けたような気がした。


「その子は私の所為で心を失くした。目の前で母親を…アクマになった母親を私が壊したから。」

「でもそれはさんの所為じゃないんじゃ…?悪いのは全てアクマを作る千年伯爵…」

「そうね。でも小さな子供に悪いのは私じゃない、なんて言っても信じてもらえないし言い訳にしか聞こえない」

「…だから自分が悪者にになったんですか」

「それでよかったの。それまで私はただ言われたとおりアクマを倒すだけだった。でも意味が見つかったの」

さんは優しすぎます」

「アレンも優しすぎるわ。マテールでよく分かった」


二人同時に声を出して笑った。それまでの暗さが嘘のような気がした。


「その女の子はまだ元気なんですか」

「施設に預けて戻ってきたから、多分まだ元気だと思う。もう会わないって決めてあるけどね」


よかった、とアレンは自分の事の様に息を吐いた。

ふと、は自分の体の異変に気づく。息がし辛い。胸が熱くなっていくのが分かった。以前にもこの症状は起きたことがある。慌てずに一つずつ言葉を生み出す。


「大丈夫ですか!さん」

「ユ、ウが…ユウが怪我を、してる」

「カンダが…?」

「コムイさんに、伝えて…お願い」


そこでの意識は途切れた。アレンは彼女を背負い、コムイを探す。から不安の叫びが聞こえた気がした。










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(2007/12/20)
(2008/2/16 編集)