「夕方には帰るから」
正午、部屋に戻るとこんな書置きが机に置いてあった。
名前は書いていないが字から見るとだろう。
何処へ行くかも書いてない。夕方というのも大雑把すぎる。
俺は溜め息を一つして少しの心配をしながら夕方になるのを待っていた。
「ただいま」
部屋のドアが開いたと思ったら普通にが帰ってきた。
「何処へ行っていた?」
「海、見てきたの」
は笑ってはいないが嬉しそうな顔をしていた。
俺は無事に帰ってきたということでよしとすることにした。
「久しぶりの休みだし海が見たかったのよすごく。プラントの海は人工的だからちょっと嫌だったけど…でもすごく綺麗だった。海はすごいわ」
は部屋の窓を開けた。涼しい風が入ってくる。
「浜辺につけた足跡が波に消されていくのをずっと見てたのよ
静かで、風の音しか聞こえなくて。そしたらイザークに会いたくなったわ」
「今度は地球の、人工的じゃない海が見たい」
は風に吹かれながら希望に溢れた目で言った。
「でもこの戦争が終わってからね。戦争で汚れた海なんて見たくないもの」
「あとMS の中から見るのも嫌。戦争のために地球に行くってのも嫌だわ」
今は戦争中だ。地球も争いが激しい。軍人の俺達にはそういうこともありえなくは無いだろう。
俺は、そうだな。と相槌を打って続けた。
「書置きってのは何するかをしっかり相手に伝えるように書け。これじゃわからん」
「今度行く時、書置きは書かないわ」
は今日一番の笑顔で俺をからかう様に言った。
「だって今度はイザークも一緒に行くから」
俺はを抱きしめながら、たまには海を見るのも悪くはないなと思った。
風の音だけをきいて
イメージソング GARET CROW "風の音だけをきいて"
(200/4/29)