Platina







「あぁー飲み過ぎちまったぁ」

「ちょっと、こんなところで寝ないでよ銀時」


深夜1時頃に銀時が帰ってきた。今日は長谷川さんと飲みに行くといって6時ぐらいに出て行ったのだが、何で飲みに行くだけなのに何時間もかかるのかが私にはさっぱり分からない。
前、銀時に、そんなにお酒は美味いものなの、と聞いたことがある。私は成人しているもののお酒は苦手で下戸だった。銀時は、お前は酒と友達になってねぇから美味くと思わないんだ、と真剣な顔で言っていた。そんな子供じみたことを真剣に言われて私は溜め息をついた。


「ー水持ってきてくれぇ」

「しょうがないわね、持ってくるから自分で歩いてソファまで行きなさい」


酔った時の銀時は子供みたいだ。その代わり私が母親のようになってしまう。


「水持ってきたよ…ってまた寝てる」


銀時はソファに横たわり寝ていた。お酒を飲むとそんなに眠たくなるのだろうか。飲まない私には全く分からなかった。


「寝るなら布団で寝てよ銀時」

「ん…動きたくねぇ…」

「…もう」


そのままソファで寝ていたら風邪をひいてしまいそうだったので、押入れから毛布を持ってきて銀時にかけて、隣へ腰を下ろした。


「、ひざまくら」

「人にものを頼むときは、どうするんだっけ?」

「…さん膝枕をしてくれませんか」

「しょうがないわね」

「あぁ、好きだぁ愛してるー」

「はいはい。酔った時にしか言わないその言葉は聞き飽きたわ」

「嫁さんになってくれー」

「もうお嫁さんみたいになってます」

「本当の嫁さんになってくれー」

「……どこからが本気か分からないわ」


銀時の頭を膝から退けて立ち上がろうとすると、銀時が起き上がり、抱きしめてきた。少しドキドキしてしまった何て言えない。


「動けるじゃない」

「なぁ、お前この前、お酒と友達になりたいって言ってたよな?」

「はぁ?そんなこと言ってな、」


全てを言い終わる前に銀時は唇を押し付けてきた。優しくはなかったが乱暴でもなかった。お酒のにおいが口いっぱいに広がった。


「……お酒臭い」

「これで、は酒とお友達だ。よかったな」

「…意味が分からないわ」

「今度二人で飲みに行こう。いい店知ってるぜ」

「…仕方ないわね」

















「……気持ち悪いっ」

「オイオイこんなとこで吐くんじゃねぇぞ」


今日俺たちはこの前、俺が酔った時に約束した、二人で飲み行くというのを実行した。そんなことを約束したなんて全く覚えてねぇけど、俺は約束は守る男だ。 俺の行きつけの店に行き、二人でいろいろ話しながら飲んだ。俺はが下戸だということも、すぐ酔いつぶれることも知ってたから、少し飲むだけにした。

案の定、は酔いつぶれて歩けなくなった。ここまで酒が弱い奴を見たことがない。 はビールしか飲んだことがなかったが、今日初めて日本酒やカクテルを飲んだら美味かったらしく、俺の奢りをいいことに高くて美味い物ばかり飲んでいた。おかげで俺の財布は寂しくなっちまった。

やっと家につき、玄関を入ったところでは座り込んでしまった。やはり酔っ払いというのは玄関で寝るのが好きらしい。


「部屋までは頑張れよ」

「もうダメ。銀時おんぶして」

「しょうがねぇなぁ」


こんな子供っぽいは初めて見た。その所為で新鮮さが伝わっていつも以上に可愛く見えた。
寝室までを背負っていった。1年ぐらい前、が足を挫いた時にも同じようにしたことを思い出した。あの時よりか軽くなっているような気がした。1年も前のことだから確信にはならなかったけど、驚いた。


「銀時ー好きよぉ」

「そんなことの口から初めて聞いたかもな」

「旦那さんになってぇ」

「……本気か?」


本当にがそんなことを言ったのか分からなくて、しばらく固まってしまった。冗談の様に聞き返したら、は心地よい一定のリズムで呼吸をして眠っていた。 を布団に寝かせたが、服の裾を掴んで離さない。


「おーいー手ぇはなせぇ」

「ん……」


これでは動けないから、寝てるの隣に寝転んだ。もちろん布団などあるわけがなく畳の上で寝転んでいる。 ぐっすり寝ていて揺すっても起きない。こんなに優しい顔して眠るは初めて見たかもしれない。今日は初めて見るばかりで楽しかった、というと怒るだろうか。

の前髪をかきあげる。の髪の毛は細く長く、サラサラしていていつまでも触っていたくなる。


「お前、昔より絶対キレイになったよな」

「…そりゃどうも」

「あれ、起きたのか」

「あんなに髪を触られたら誰でも起きます」

「悪かった、悪かった」


は拗ねたのかそっぽを向いてしまった。俺はをこっちに向かせると、キスをした。自分で言うのもなんだが、優しかったと思う。


「酒くせぇ」

「お互い様じゃない」

「よし、寝るか」


俺は起こしていた上半身を畳につけて大の字の様に寝た。は自分が掛けていた毛布を半分俺にも掛けてくれた。


「優しいじゃねぇか」

「…それもお互い様」

「だな」






降り注いだ白金の光