「!」
今日一日が終わろうとしていた。私は学校の授業も委員会の仕事なども終わらせ、帰る途中だった。
うしろから大きな声で呼び止められ恥ずかしくなる。別に呼んでほしくなかったわけではないけど人目と言うのを気にしてほしいと切実に思った。
「あれ、十四郎。委員会はもう終わったの」
「あぁ何か知らんが帰れと言われた」
曖昧な答え。と思いながらも内心は一緒に帰れて嬉しい。自分自身のことはよく分かっている。
「うしろ乗ってくか?」
「いやよ。私はもう二人乗りはしないって決めたのよ」
「前にも聞いたが。何でだ」
十四郎の好意は嬉しいのだが私は断固拒否した。
「昔友達が私を無理やりうしろに乗せてね、案の定転んで大怪我するところだったのよ」
「そんなのが理由か」
「私は1秒でも長く生きれるように自分から死にに行くような危ない事はしないって誓ったのよ!」
「俺なら絶対転ばない」
「無理よ。たとえ転ばなかったとしても私の誓いはもう破ることができないの!」
この人は約束を破らない人だ。たぶん転ばないと思う。でも私は決めたことは突き通す主義なのよ、十四郎。
実際、彼氏彼女の関係なのだから一度は二人乗りをしてみたいとは思うけど。恥ずかしさも乗りたくない理由に入るのかな。
「相変わらず頑固だな。まぁそんなところが俺は好きだがな」
顔色一つ変えずにさらりと一言。こんな言葉でも私は赤くなってしまう。
「もうすぐ夏休みだな。どっか行くか?」
十四郎の一言で我に帰る。あぁそうだ、もうすぐ夏休みだ。
「と、十四郎と一緒ならどこでもいい」
さっきの赤さを保ちながら更に赤くなって下を向いてしまった。自分でも恥ずかしい。
十四郎はクスリと笑って、そうか。と優しい声で言ってくれた。
私は前を向きなおした。そこには大きな赤い夕日が沈みかけていて綺麗だった。十四郎は3歩ほど歩き、立ち止まってうしろを振り向いた。私が夕日に見とれていると十四郎は笑ってまた歩き出した。私は彼の後ろ姿にも見とれてしまった。大きくてたくましくて、そして今は綺麗な紅に染まっていた。その魅力的な背中へ吸い込まれるかのように走って行き、抱きついた。人目など気にする暇もなかった。十四郎は驚いていたが手を握ってくれた。私は直ぐに離れたけど十四郎は手を離してくれなかった。
それがすごく恥ずかしいのに、すごく嬉しいのはあなたを愛しているからでしょうか?