今日はとても晴れていて散歩するのに丁度いい。雲ひとつ無い、なんてことは実際にはありえなくて、目を凝らせば雲はいくらでも見つけられる。そんな天気。 隣には貴方ではなくて、白い未確認生物がいるのだけれど。

「エリー。本当に桂さん何処に行ったのか分からないの?」

エリザベスの手には看板が握られており、そこには‘分からない’と書いてあるだけだった。 私は溜め息をつく。朝、攘夷浪士たちが集まる集会所に行ったところ、桂さんの行方がわからないという。 いつもの事だったので、皆それほど心配はしていないものの、やはり少し動揺していたようだった。

「まさか真選組に捕まったとか……まぁ捕まっても大丈夫よね」

エリザベスも‘おうとも!’なんて暢気な事を言ってるから本当に大丈夫だと思う。 遠くで爆発の音が聞こえる。別の攘夷浪士が爆破させたのか、はたまた銀さんが事故でも起こしたのか。 そんなことを考え、エリザベスとソフトクリームを頬張りながら歩く。また爆発音が聞こえた。今度は結構近かった。煙も見え、人々はざわついている。 聞き慣れたパトカーの音が聞こえた。真選組だ。来た道を振り返ってみると、砂煙が舞い上がり向こう側がまったく見えない。 耳をすませてみると、桂ァァァァ!!!という叫び声が聞こえる。まさか桂さんが…?エリザベスと一緒に砂煙の方を見つめる。 煙の真ん中から人が飛び出してきた。ひと目で桂さんと分かった私達が声をかけようと口をあけるが、走ってくる桂さんの方が一足早く私の腕を掴みそのまま走り続ける。

「か、桂さん生きてたんですね!ってかソフトクリームがァァァ!!!」
「また買ってやるから!口を開けていると舌を噛むぞ!」

猛スピードで駆けて行く。こんなのもう慣れっこだから大丈夫だけど、最初の頃はキツかったなぁ。 そんな昔の思い出に浸りながらも懸命に走る。桂さんの足手まといにはなりたくないから。 小さな路地を行ったり来たりして、なんとか真選組から逃げることが出来た。私達は肩で息をする。

「エリーは大丈夫かな」
「アイツは俺より身軽だから大丈夫だ。それよりは大丈夫か」
「私はなんとも。桂さんが無事ならそれでいいんです」

そうか、ありがとう。と言い私の頭を撫でてくれる。ここが薄暗い路地じゃなければ本当に最高だと思った。



約束は破られるものだとしたら、貴方ではなく、神様に罪をかぶせたい。 でも神様はそれさえも届かないところに居るのでしょう。意地悪だ、と言ってしまったらそれで終わりだけれど。 心に留めておいた言葉がどうせ神様に聞こえてしまうなら、声にして言った方が気持ちがいい。 そう思うと、神様は本当に意地悪な存在だ。でも…。



「くそっ。アイツらまだうろついている。どうするか…。何笑ってるんだ」
「神様はまだ捨てたもんじゃないんだ、と思って」

私は立ち上がり桂さんの綺麗な手をとる。さっきとは正反対に私が桂さんを引っ張り走り出す。

「こっちです!上手く逃げられますよ!」

振り向くと桂さんは呆れたように笑っていたが、どこか優しさが溢れていた。
騒ぎがおさまったら、その笑顔のまま抱きしめてくれることを願って握る手に力をこめた。









手と想いと







神様について







(2007/1/10)