幾時シリーズ



明日の朝日を待つ



オレは精神訓練を受けたはずなんだけどなぁ。 任務の時はさすがにの事は考えないようにしているけど、 それ以外の時は、どうしても考えてしまって、気が滅入る。 の勤務先で逃げられたあの日から、を探しているが一向に捕まえられない。 惜しいところまで行っても、結局逃げられてしまうのだ。


「はぁ…」
「オイ、溜め息ばかり吐くなよ。こっちまで嫌になる」
「ならを連れてきてよー、アスマー」
「お前が捕まえられないのに、俺が連れてこれるわけねーだろ」
「それもそーだね」
「お前、その言葉、本当に喧嘩売ってないのか?」


キレそうになるアスマを軽く流して、オレは火影様に呼ばれていたので訪ねた。いい機会だ、のことを聞くことにした。


「三代目、何故が帰ってきたことを教えてくださらなかったのですか」
「カカシよ、そう気をたてるでない。ワシがに口止めされとるのは分かるじゃろ」
「しかし、何故オレを避けるのでしょうか」
「あやつにも考えるところがあるのじゃろ」
「オレはと話がしたいだけなんです」
「お主ならを捕まえることが出来る。あやつを捕まえたらワシのところまで連れてくるのじゃ」
「…御意」


オレは人生色々に戻ろうとアカデミーを歩いていた。ふと見た商店街にがいた。 オレはS級任務の時のような気配の消し方をし、に近づく。彼女は今、八百屋の主人と話しこんでいる。 あまり気を張っていない今しかないと瞬間的に思った。何度も死闘を潜り抜けた忍の経験が言う。 徐々に近づき、一気に彼女の懐へ飛び込もうとしたが、感づかれた。 オレが飛び込んだ瞬間に、が蹴りを仕掛ける。タイミングが上手い。彼女の蹴りはオレの腹に入った…がそれは分身だ。 分身が消える前に、オレは八百屋の屋根の上からの背後へ降り立つ。 背後を完全に取ったと思った瞬間、彼女の回し蹴りが、今度こそ、完璧にオレの腹に入った。 かなりの力だった。オレは飛ばされ、壁に激突する。オレはすぐに立ち上がり、と向き合った。


「なぁ、何でオレを避けるんだ」
「…色々あったのよ」


じりじりと足を這わせ、道の真ん中でオレ達は向き合っていた。周りには一般人やアカデミーから見ている忍がいた。 だけど、オレ達は気にしない。オレはだけを見ていた。オレ達は同時に地面を蹴った。 激しい体術が繰り広げられる。しかし蹴りや拳が胴体に決まることはない。 この体術は、昔、オレ達が幼かった頃に毎日していた稽古だからだ。 20年前に戻ったかのようだった。体が覚えている。勝手に手足が動き、自然と笑みがこぼれる。も笑っていた。 二人とも同時に止まり、離れる。二人とも肩で息をし、二人とも喜びに溢れていた。


「…本当に、なんだーね」
「カカシは…変わらないね」


目が合い、声を出して笑い出す。何だか馬鹿馬鹿しくなり、とてもすっきりとした気分にもなる。 オレは離れていたとの距離をなくし、抱きしめた。


「生きていてよかった、」
「カカシも。避けたりしてごめんなさい」


きつく抱きしめあう。20年も前の記憶は、のものだけ鮮やかだった。 すると、が弾かれたように顔を上げ、オレと離れる。 オレはが怒っていると思い、口を開けた。


「、1年も慰霊碑の前で毎日会ってたのに気付かなくてごめん」
「へ?」
「それを気にしてたんじゃないの?」
「ううん。カカシは分からなくて当然だよ。別れたのは20年も前だからね」
「でもは俺を分かってたでしょ」
「だってビンゴブックに載ってたんだもん」


は可笑しそうに笑う。しかしすぐに険しい表情になり、オレを見ない。 全てを知りたいと思った。木ノ葉を出てから何をしてたとか、どんな気持ちなのか。全てを。


「聞きたいことがたくさんあるんだけど」
「私もカカシに話したい。でも今おつかいを頼まれてるの。1回戻らなきゃ」
「明日の朝、慰霊碑で会おう。前のように、また会おう」
「分かったわ」


そう言っては歩いていく。瞬身は使わずに、一般人と同じように歩いて帰って行く。 その姿が、オレに安心を与えた。もうは逃げたりしない。そう思えた。









「オイ、お前らすごかったな」
「アスマ見てたの?」
「皆見てたぜ?お前に蹴り入れてたな」


と別れてから、人生色々へ着くと、さっきの騒ぎを見ていた上忍たちの質問攻めにあった。 どういう関係だ、だの、カカシがちゃん狙ったら俺の勝ち目ない、だとか言っていた。 オレは軽くあしらい、ソファに座る。そして早く明日の朝になることを切望した。





(2010/1/30)