フィシスは未来を見ることができるミュウ。ブルーは彼女のことを‘女神’と呼んでいた。
私は過去を見ることができる。ミュウの過去、人類の過去、そして地球の過去も見ることができる。
過去が見れる私はブルーに何と呼ばれるのだろう。
ブルーが眠りについた。生きているものの死んだように眠っている。私は静かに眠るブルーの傍にいて見守るが毎日の日課だった。ジョミーの行動や今日の出来事など、思念波ではなく言葉に出して伝えた。
ある日、私がブルーの近くへ寄ると彼はゆっくり瞼を上げた。
「っブルー、大丈夫なの」
「大丈夫。のおかげで調子がいい。毎日居てくれたろ」
「分かるの」
「思念波がすごかった。僕に早く起きてと言ってる様だった」
ブルーが髪を撫でてくれる。もうブルーが眠って何年も経っているから久しぶりだった。嬉しくて涙が流れた。
「今も君の思念波はすごい。喜びと…人間への憎しみ」
「…ええ。私は人間を憎んでいる。過去を見ることができる私はミュウの誰よりも人間の醜さを知っているから」
「そうだね。でも憎むべきは人間でもなく、過去でもなく、もちろんミュウでもない」
「貴方は悲しい過去を知っていても、人間を憎まないのですか」
「人間は憎むべきものではない。憎むべきは人間とミュウに溝を作ってしまったことを憎むべきだ」
「…そうかもしれない。でも私は…」
「。久しぶりに過去を見せてくれ。君の苦しみ憎しみが僕と分かち合えるように」
「いいわブルー。その前に聞きたい事があるの。貴方はフィシスのことを‘女神’と呼んでいる。私は何て呼ばれるの」
「そんなことを気にしていたのか。僕は君と出会った時から心の中では呼んでいるんだ」
「何と呼んでいるの」
「スピカ。星の名前だよ」
「いい響きね。ありがとうブルー」
「さぁ見せてくれ、過去を。君が見せてくれる過去をバネに僕らは進んでいけるんだ」
「それが聞きたかったの」
二人で額を重ね合う。私はまだ綺麗な頃の昔の地球を見せた。その地球は青くて、正にブルーのように思えた。この綺麗な星を目指して私たちは進んでる。
たぶん今の地球はこんなに綺麗じゃないでしょうけれど、それでもいい。誰もがわかっていることだから。 その過去を胸に私たちは進むのだから。そうブルーが教えてくれた。
「地球へ、地球へ辿り着いたら、貴方は何になるの」
「僕は何にもならない。ミュウの長でもなく、人間を恨む者なく、地球を愛す者として生きたい」
「ブルーならなれるわ、きっと。なら、私は過去を、過去の過ちを愛す者としてブルーの傍に居続ける」
「地球へ辿り着くまでの間、例え僕がこのあと目を覚まさなくても、ミュウたち、人間たちに過去を見せてやってくれ」
「…わかったわブルー。でも貴方はきっと目を覚まします。私たちを救うために命を懸けて」
「それは過去からわかるものかい」
「いいえ、これは願いよ。ミュウたちがブルーに目を覚ましてほしいと願っているの」
「ジョミーがいる。今、みんなはジョミーを信じているだろう」
「確かに今はみんなジョミーを信頼してる。けれどみんなは貴方も信じているのよ、ブルー」
「そうだと、いいね」
「またブルーと話したい。私はいつもここにいるから」
「あぁまた、また聞かせてくれ、見せてくれ。過去を」
「はい。ソルジャー」
目をゆっくり閉じてブルーは深い眠りに入っていった。
もう目覚めないかのような静けさ。心配になったけれど、あの頃はまだ信じていた。ブルーは約束を破らないと。
星のような一瞬の青い瞬きが消えていった、貴方があの日の約束を破った日までは。