気付いたら、気になっていた。最初は向こうからだ。
「仁王君、アドレス教えてくれない?」
いつもと同じ、俺の彼女の座が目当てで、メルアドを聞いてきたのだと思った。
この間、彼女に振られたので別に教えてはいけないわけではない。俺は嫌でも嬉しくもなくただ赤外線を向かい合わせた。
俺は来る者拒まず。去る者追わず。告白されれば承諾し、別れを告げられれば了承する。
俺は自分からは告白しない。デートにも誘わないし、キスへも誘うことはない。
今までの彼女だった女は皆、構ってくれないことに嫌気が差し、俺を振る。
ただ別れた後も、俺と付き合っていたという事実を、彼女達は誇らしげに首にぶら下げるのだ。
今回もその類かと思った。隣の席のは無口で、あまり笑わず、感情を表に出さないタイプだ。
クラスでは人と話しているところをあまり見ない。だいたいは一人でいる。
俺も自分の席で一人でいることが多いから、自然と隣の人物については目に付く。
ここ最近は少し会話をするようになった。
それがやけに新鮮で、このクラスで彼女と話せるのは自分だけだと誇る気持ちが少しあった。
最初は、よく目を見て話す子だと思ったぐらいだった。
メルアドを聞かれてからは彼女のことを自然と目で追っていた。
それで気がついた。俺以外の男子にはそんなに目を見て話していないことに。
何故俺とメールをするのか。何故俺の目をしっかり見て話すのか。それは俺のことが好きだからだ。
俺は向こうがそういう気持ちでメールをしているのだと勝手に解釈しながら返事をした。
1週間経っても、2週間経っても一向に告白の言葉はない。普通の女ならもうすでに告白をしてくる時期だ。
でも彼女のメールはいつも学校のことについてのみ。数学の課題って何ページまでだっけ?だとか、普通のメール。
俺は嫌気がさした。何故かイライラし、何故か期待をして待っている。
「、お前さん俺のこと好きなんじゃろ」
「えっ」
「えっ」
放課後、教室でに聞くと、彼女は心底驚いた表情で、声を上げた。それに驚き、俺も柄にもなく声を上げた。違うのか…?
俺が好きだから、俺の目を真っ直ぐ見据えていたわけじゃないのか…?
「す、すまん、忘れてくれ」
俺は文字通り頭を抱えた。これほど恥ずかしい思いはしたことはなかった。
ペテン師だとか詐欺師だとか言われるが、今は騙す言葉が見つからない。自分の焦りを隠すことも出来ない。
俺が放心状態でいると、が急に笑い出した。文字通り腹を抱えて。
「そんな仁王くん初めて見た!」
「…そんな笑うを初めて見たぜよ」
二人で笑いあう。恥ずかしさがなくなり、いつもの自分が戻った気がした。が俺の目をしっかりと捉える。
「好きだよ」
「…本当か、それは」
「今気づいた」
「さいですか」
俺はキスで気づかせようと思った。俺がどれほどお前を愛しているか。
どれほどお前に振り向いて欲しかったか。初めてのこの感情を伝えるべく、俺は初めて自分からキスをした。
芽吹く