「、ドライブにでも行かない?」
そう誘われて1時間ほど経っていた。今私たちはユージィンが運転する車の中だ。
ドライブと言っても遠くに行くわけではなくて、見慣れたはずのニューヨークの街をぐるぐると回っているだけ。
見飽きた町並みも、貴方の横で話していれば苦にはならなかった。
「あっ、あれ花鹿と立人じゃない?」
住宅街を走っていると、見慣れた背中が2つ見えた。近々二人で暮らすため、引越しの準備をしているといっていた。
その買出しだろうか、立人は大きな荷物を抱えていた。ユージィンがウィンドウを開け、話かけた。
「やぁ、花鹿」
「あっ!ムスターファ!久しぶり!」
「おいおい、私には挨拶なしかい?ユージィン」
「私にも挨拶がないわね、花鹿」
「えっ!?!?何でムスターファと!?」
私が助手席から顔を出すと、花鹿と立人は驚いて目を開いていた。私とムスターファは笑いあった。
「ぼくたちは付き合ってるんだよ」
「…えっ!?ほ、本当なの、!?」
「えぇ、本当よ」
「前から仲良かったっけ?」
「仲は…良かったのかしら?ユージィン?」
「まさか花鹿一筋の君がねぇ」
花鹿も立人も疑っているようだった。それが私とユージィンにはとても面白く感じでまた二人で笑いあった。
「ふーん、ムスターファがねぇ。何か寂しくなっちゃうね」
「親鳥の気持ちかい?」
「そんなとこ。じゃあ今度はとムスターファの結婚式だね!」
「…そうなるといいね」
そのユージィンの言葉を聞いて私は驚いた。私と結婚してもいいと思ってるのかしら…?
ユージィンと結婚だなんて考えてなかった私は固まった。しばらく話して、二人とは挨拶を交わして別れた。
また二人だけのドライブが始まる。
「僕との結婚は嫌かい?」
「そっそんなことないわ…ただ、貴方があんなこと言うとは思わなかったから」
「そうなのかい?ぼくはずっと考えてたけどなぁ」
「結婚のこと?」
「ぼくももういい年だからね」
夢ではないか、私は今を疑った。きっとこの幸せな時間も言葉も全て夢で、現実にすぐに引き込まれる。
そう思っていると、ユージィンが車を止めた。何事かと貴方の方を見た途端、唇が重なった。
この唇の感触や伝わる熱で、これは夢ではないと分かった。
「結婚しよう、」
「…はい」
ユージィンはこのドライブで私にプロポーズしようと計画していたらしい。指輪も準備していて貴方らしくないと笑ってしまった。
車を出て景色を見る。私たちはニューヨークの街を一望できる丘に来ていた。私たちの街、私たちが出会った街。
花鹿や立人とも出会った街はこのニューヨークなのだ。大事にしたい、そう思った。
左手をとられ、薬指に銀色のシンプルな指輪がはめられた。その指輪は、涙ではっきりは見えなかった。
私は貴方に抱きついた。私の貴方への愛の表現はやはり抱きしめることだった。
貴方は私に近づき、また唇にキスを落とした。
「やっぱりキスなのね、ユージィン」
ring of tears